洋服の文化というのは、人類の進歩とともに発展したきたのですが、
そもそもは上着に最適な生地、トラウザーズに最適な生地と別れていたものが、生産効率の向上や仕立てやすさといったどちらにも最適な生地が生まれるようになります。
そういった前置きは話し出すと終わらないのでここでは割愛します。
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今日ご紹介するのは、そんな上下ともに扱いやすく、強度の高い生地を使用したScyeのセットアップ。
ルーツは1890年代のラウンジスーツでしょうか。
このセットアップは生地がポリエステルのサージ素材を使用しています。
ポリエステルと聞くと天然素材ファンにはマイナス面もお察しますが、
手入れのしやすさや丈夫さといった観点においては、マンメードファブリックにおいて普段着に適したものはないように思います。
私自身、ラングラーのランチャーやリーバイスのスタプレといったものはよくきていまして、お家で洗い特にアイロンなどもかけずガシガシと扱っています。
ポリエステルのサージといったところがサイさんらしい生地使いでスタプレより厚く、ランチャーより薄いので日本の気候にはちょうどいい厚みと表面の光沢が抑えられて落ち着いた印象です。
ジャケットは前述したラウンジジャケットの意匠を体現していて2パッチのシンプルな前たてにノーベント、ボックス型のゆったりしたデザインになっています。
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ラウンジジャケットがスコットランドのワーカー発祥というのもあり、チェンジボタンで取り外しができる仕立てや上ボタンまで閉めてスタンドカラーとして着用できます。
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前振りの袖付けや袖口のカフスのデザインなど細部までパターンが行き届いており、イージーなGジャンやブルゾンとは違う格式や歴史を感じるアイテムです。
ボトムスは、イージーパンツ。
それだけでは終わりません、前部分はセンターにプレスステッチを入れており後には入れていません。
これにより縦のラインが非常に美しいワイドシルエットです。
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ウェスト部のドローコードの出口はもちろん鳩目が打たれ、コード先はメタルといったあたりも上質さを感じます。
お手入れ時のアイロンプレスは必要なく、これからのシーズンに重ねるお洗濯に手がかかりません。
もちろん、手洗いがおすすめで裏返してネットに入れていただくのが良いでしょう。
ポリエステル特有の毛玉が抑えられることで長く愛用いただけます。
ビジネス用のスーツをストレッチでイージーよりも、遠い19世紀にリラックスするために生まれたクラシックな仕立てを現代の生地に置き換えて仕立てたセットアップは他にないでしょう。
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